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作りかけの物語

 

 

気付けば小さな部屋で

夜の闇に怯えている

君の手を引いて連れ出していた

僕はただ君の

涙の落ちる音が響かないように

がむしゃらに走り続けてる

 

「誰か灯りを灯してくれないかな?」

君がぽつりと僕の背に問いかける

「これから二人で探しに行くんだ」

それが物語の始まり

 

どこかの大人が残した言葉は

もう響かない

僕らにはそんなモノなんの価値もない

手探りの夜原っぱをかけて行く

小さな灯りが物語を照らし始めた

 

いつしか小さな手の中から溢れる光

僕らの周りをそっと照らす

「キレイだね」

君がそう呟くから

僕は泣きそうになりながら頷いたんだ

 

あの日僕らを照らした無数の光

今はどこかへ消えてしまったみたいだ

ぼくはなにをまもってきたんだろう?

涙の落ちる音が響いた

 

灯りの無くなった夜の原っぱに立ち

あの日涙をこらえた僕が呟く

「大人になったら忘れてしまうの?」

僕はがむしゃらに走り出す

 

いつか古くしおれてしまっても

あの日は消えない

夜の闇を照らし続けてる

作りかけの物語の隅っこに

書き足せる灯りが

まだどこかにあるはずだから

 

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